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小祝政明氏による新年記念講演会 報告1

単なる経験やカンに頼らない有機栽培セミナー

2012年1月14日、塔原の葛城上地区公民館にて、小祝政明氏の講演会がありました。有機農業を科学的なアプローチで追求されている小祝氏の講演ということで、生産者やセンター社員だけでなく、消費者の皆さんの関心も高く、約45名が参加して下さいました。特に今回は、座学に先立って、塔原の実際の畑で講義をして頂けることになり、最初に藤原一郎さんの畑と藤原勝さんの畑、2カ所に行きました。この2つの畑は小祝氏の目にはどのように映ったのでしょうか? その様子を報告します。

【報告:センター坂本】
 


小祝氏の紹介

「生産者は皆品質の良い有機野菜を作ろうと努力していますが、品質や収量など悩みも多いと思います。私自身、20代から30代中頃まで農業をし、かなり痛い目にも遭って、これではダメだと気づいて、自分が出来ていない所の研究を始めました。有機農法は、哲学や思想と結びついて語られることが多いのですが、植物は土から養分を吸い太陽の光で光合成をしています。植物にいくら哲学を説いても、植物は与えられた環境の通りにしか育ちませんよね。そこで科学的な目で植物を観察し、植物の生理を理解することが必要になってくるのです。」
 

 

小祝政明氏(ジャパンバイオファーム代表)

単なる経験やカンではなく、観察を通して植物の生理を知り、客観的なデータに基づいた有機農業の指導を行っています。有機栽培の実践的な著書多数。


塔原生産者・藤原一郎さんの畑にて

「この圃場は遠目に見るだけでも何が足りないのかすぐ分かりましたが、実際に圃場に入って確信しました。例えばそこのブロッコリーは皆背が低い。そして虫食いもありますね。状態が良ければ大きな葉が上向きに茂って、高さも揃うようになっているはずです。しかし見てください、株の上半分はどれも葉が小さいですね。土に何かが足りないために、そこまでしか育たなかった訳です。しかも葉は薄っぺらく光が透けていますね。赤くなった葉も見えますから、これから温度が上がったとしてももうこれ以上育つことはないはずです。では、何が足りなかったのでしょう?」・・・というお話から、フィールド講座がスタートしました。実はこの質問に、堀田新吾さんは真っ先に「団粒」と正答をされていましたが、大部分の人には意味がよく分かりません。ですがこの意味を伝えるため、小祝氏はわかりやすい喩えで、根の環境がいかに大切かを説明してくださいました。

藤原一郎さんの畑にて
圃場の半分は耕うんした状態です。
残り半分にブロッコリーやカブが植わっていますが、
ブロッコリーは背が低い状態で成長が止まっています。
寒さにあたって赤っぽい葉もあります。カブもあまり大きくありません。


「植物は葉から水を蒸散させ、その力で周辺の水を吸い上げます。この水に含まれる栄養分で体を作ります。根で吸った栄養を葉に上げ、そこで光合成をし、カロリーを作り出しているのです。光合成で作ったエネルギーを貯め、このエネルギーを燃やしてカロリーを取り出します。これが呼吸です。根は、葉と同じ細胞ですから呼吸しています。呼吸にはエネルギー源と空気が必要です。エネルギー源は葉からもらいます。ではここで例えば、畑が冠水し、ずっと水に浸かったままだとどうなるでしょう。窒息しますね。窒息が長く続くとどうなるでしょう? 死にますね。これが根腐れです。死ぬまでとはいかなくても、窒息していると活動ができません。つまり、根が呼吸できなければ、周りにどれほど良い栄養があっても取り込むことはできないというわけです。栄養が豊富で、そこに植物に必要な水がたっぷりきたとしても、土の状態が良くなければ植物は育ちません。つまり、一番大切なのは土の状態を良くすること、ということになります。


そして、そちらの耕されているエリアを見れば、ワラを鋤き混んでいますね。ワラは土を柔らかくするのによい資材です(藤原一郎さん頷く)が、ワラそのものが土を柔らかくするのではありません。ワラに何か変化が、化学的な変化がおきて土を柔らかくしてくれるのですが、その仕組みが分からなければ闇雲に施肥をすることになります。では、質問。この圃場に1tonの堆肥を入れる場合、わら300kg+鶏フン700kgの組み合わせと、わら700kg+鶏フン300kg、どちらの組み合わせがより土を柔らかくすると思いますか?(ワラの多い方に手を挙げた方が多かった)答えは、ワラの多い方。皆さん正解です。では、この比率が、7:3ではなく6:4や5:5に変わったとしたら、その堆肥は土を柔らかくするでしょうか? 科学に基づいて経験を積めば、この割合を聞いただけで、土を柔らかくできるかどうかが判断できるようになります。これは実績に基づいたカンです。今日はいい加減なカンではなくしっかりと数字に基づいたカンを養ってください。」というお話でフィールド講義は終了しました。

 

全員、小祝氏の話に聞き入っています。
わかりやすく、論理的な講義でした。
 

 

団粒とは
土や砂の粒子と有機物の分解物(腐植)が結着して1mmから5mmぐらいの団子状に成長したもの。団粒が増えてくると、土は団粒構造と呼ばれる形になり、土壌中の空隙が増え、ふかふかと柔らかく、排水性は良いのに水保ちも良いという植物にとって理想的な状態となる。有用微生物も多くなり、土壌中の生態系も豊かになる。


塔原生産者・藤原勝さんの畑にて

立ち入っただけで土が柔らかいのが分かります。勝さんによれば数年前から土壌改良をして今とても良い状態とのことでした。土作りが上手く行っている証拠に、ブロッコリーの最上部の葉は大きく育ち、分厚く、しっとりとしたベルベットのような手触りです。「ここの畑は良いですね。苦土も入れているでしょう? それが効いていますね。」と小祝氏。
 

 

土作りが上手く行った畑では、ブロッコリーが大きくきれいに成長しています。


受講者の中からこんな質問も

その他、フィールド講義中に参加者から出た質問に、小祝氏がどのように答えたか、ご紹介します。
 

  1. この畑(最初の藤原一郎さんの畑)の土は良い土なのか、悪い土なのか?
    「この畑の土はもともとが水田のために、しっかりと団粒構造を作ってあげないと良い作物は作れません。しかし土の質そのものは、とても良い。粘土と砂の割合が非常に良いのです。山がちのこの地域は、日照時間が平野部よりも短いので、より熱心に土作りに努め勉強をしなければならないところです。ぜひがんばってください。」
     
  2. 土が乾燥するとアブラムシがつくというがなぜか?
    「これにはしっかりと理由があります。虫がつくということは植物の肌が柔らかいということ。植物の肌(細胞)がなぜ柔らかいのか? それは水と深い関わりがあります。この説明は戻ってからしましょう」・・・と座学に持ち越しになりました。(その内容は、次回ご報告します。)
     


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