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有機生産者をとりまく状況から有機野菜の活用方法まで、
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食の商品化、生命の私物化

飢餓と飽食

いまソマリアが過去数十年で最悪の干ばつに見舞われ、多くの難民がケニヤやエチオピアの避難先で飢えで命を落しています。国際機関が援助の手を差し伸べようとしても、ソマリア南部を支配する勢力はそれを拒否、人々は悲惨な状況に放置されているということです。「人の命より大切な物はない」ということが嘘だとしか思えない世界です。あるいは「人の命には差があるのだ」と見せつけられているようです。
 一方で、自分が手に入れた(買った)ものは自分の物だからどう扱おうと自分の勝手と言って、大量の食べ物を廃棄する日本。お金を払いさえすれば後は私の勝手とうそぶいても、外国から輸入した食べものには二つの事実がついて回ります。一つは、食べものを輸入するという事は、相手の国の水を輸入しているのと同じだということ。二つ目は、その食べものはポストハーベスト農薬の汚染を免れないということ。日本ほど水に恵まれた国が、世界的な水不足が今後の地政学的混乱の原因の一つになると懸念されているときに、「お金を払って(自由経済・自由貿易)世界中から安い食べ物を買って何が悪い」という姿勢で居続けていることに心が痛みます。「この世界から日本さえなくなってしまえば、どんなによい世界になるか」、飢え渇いて苦しむ多くの人たちの声が聞こえてきそうです。
 


改造された命

食の基本は、他の生き物の命をいただくということですが、牛や鶏を効率至上主義の肉生産工場の発想で飼育する人間。植物のいのちのタネを特許で囲い込み、地域のみんなの共有財産だった在来種のタネを駆逐し、毎年お金を払わなければ植え付けが出来ないように農民を追い込んでいくグローバル企業の戦略。人類が農業を始めてからずっと、世界のどの地域でも、農家は収穫物の一部から種を採って残し、翌年その種を植え付けるということを続けてきました。この連綿と続けてきたことがいま、失われようとしています。種ビジネスで加熱するバイオ産業が、遺伝子組換え技術を利用して「自殺する種」を開発したのです。これはターミネーター技術と呼ばれ(映画「ターミネーター」を思いだします)、タネの遺伝子には、発芽を始めたら毒素を出して自殺するようなプログラムが施されています。ターミネーターを仕込まれた種は全く発芽することができません。自家採種は不可能になり、農家は毎年企業から種を買わなければならなくなります。(種を売る企業だけがターミネーターを解除する方法を知っており、特定の化学処理をした「発芽可能な種」を販売します。)
 


自然、命、自由

自然の贈り物の命の営みまでも私物化することを許し、自然が万人に等しくもたらす恵みを全ての人が等しく享受する権利までも奪うことを許容する最近の風潮。私たちがこれこそが一番大切なことと信じていたことを壊してまで、この世の中に持ち込みたいもっと大切な物とは何でしょうか。人の命より大切な物とは何なのでしょうか。自由経済や自由貿易、お金さえ払えばなんでも自由にしていいということなのでしょうか。
 センターがお取引する生産者で自家採種に関心のある農家さんはけっして多くありません。それでも、私たちが自由につくりたいものや食べたいものを手に出来る自由は、自然の恵みや命の営みは全ての人たちに等しく提供されるもので、万人がそれを享受できる「自由」が確保されてはじめて手にできるものだと思います。生産性や収益性を考えたら自家採種など考えられないと言下に否定する前に、こうした憂慮すべき世界の流れの中で、私たちは農家の皆さんとタネや自家採種のことも話が出来ればと思います。
 

センター・山下逸喜



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