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有機生産者をとりまく状況から有機野菜の活用方法まで、
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アグロエコロジー・ ワークショップ 報告レポート

 先日京都の総合地球環境学研究所にて開かれた、アグロエコロジー・ワークショップに参加してきました。アグロエコロジーの第一人者であるミゲール・アルティエリ氏をカリフォルニアより招いて行われた今回のワークショップは、関西圏だけでなく全国から大学教授等が集まるかなり高度なレベルのものとなりました。


(総合地球環境学研究所より画像を拝借)

“アグロエコロジー?”聞きなれない言葉だなあ、という方も多いかと思います。かくいう私もその一人。専門用語飛び交う中、必死に頭をフル回転です。ラテンアメリカで成功をおさめたアグロエコロジーですが、日本にこの考え方が入ってきてまだ10年とたっておらず、日本語での定義づけは難しいようです。アグロ(農業)とエコロジー(生態学)が合わさった言葉で、主にグローバル巨大企業が推し進めてきた近代農業とは全く異なる、環境面で持続可能な(生態系を壊さない)農産物の生産、流通、消費を行っていこうという考え方、または運動そのものを示すようです。


 第一に環境にやさしい農業という点では、有機農業と基本的に同じ考え方で、化成肥料、化学農薬を畑につぎ込んで生産性を上げようとする近代農業を、持続不可能な農法として強く批判します。特に化成肥料は、土の中の微生物のエサを奪ってしまうため、微生物の活動が少なくなり、固くて保水性の無い土へと変えてしまいます。そして結果的に農産物は十分に根を張ることができず、収量が落ちるといった具合です。加えて土壌を破壊するだけでなく化成肥料も農薬もその生産を化石燃料に頼っているため、有限であり枯渇の恐れも常につきまといます。


化成肥料、化学農薬を批判するだけでなく、生態系の“多様性”の重要性を強く主張します。市場のニーズに合わせて“売れる”品目に絞って大量生産を行うのではなく、たくさんの品目、品種の野菜を同じ畑に植えることにより、害虫や、病気のリスクを下げるなど、本来伝統的に行われてきた農法にヒントを得ながら、エコロジー(生態学)の原理を応用した農業を行います。例えば今ではほとんど見られなくなった伝統野菜の種を守っていく運動などは、この多様性を尊重するアグロエコロジーの考えに沿うものと言えるでしょう。


 またアグロエコロジーは単なる農業手法のみにとどまるものではありません。経済、社会、文化の多様性、生産者と消費者の主体性を目指す農業食糧システムを求めるもので、流通や消費のあり方にも疑問を投げかけます。たとえば、有機栽培の果物や野菜であってもそれらを海外に輸出入して、フードマイレージを加算する流通や消費は輸送に燃料を使用しすぎるため、アグロエコロジー的とは言えません。


 今回プレゼンテーションを行ったのはほとんどが大学教授の方々ばかりでしたが、その中でも唯一の生産者である橋本慎司さんの兵庫県市島で行われてきた“産商提携とアグロエコロジー”についての発表は、大阪愛農食品センターが行ってきたものにも通じるものがあるなあと感じました。市島の生産者の方は、多品目栽培による家族農業経営を基本とし、年間40から100品目を生産します。自らの自給の延長で消費者に食べてもらうという姿勢を貫いてこられました。これは畑での生物多様性の維持につながり、それによって天敵をふやし農薬を使わず野菜を栽培することを可能にします。また人間が野菜を選ぶのではなく、畑からとれる旬のものを、個人の好みに関わらず食べてもらうことが重要だと言います。そういった思いを共有する生産者と消費者が流通の役割を負担し、年2回行われる作付け会議では意見を通わせる計画的な野菜の栽培も行ってこられたそうです。生産者と消費者とのつながりから始まったこの「産消提携」の活動は、三者(生産者、流通(センター)、消費者)のつながりを大切にする大阪愛農と似ており、非常にアグロエコロジー的な流通と言えるでしょう。


 “有機”、“オーガニック”がより一般的な言葉となり需要が高まる中で、有機の市場が求めるものとアグロエコロジーが掲げる理想との間には隔たりがあると言わざるを得ません。実際に各地での「産消提携」の活動は衰退の傾向にあり、苦しんでいるところが多いというのが現実です。一般的な市場の需要に完全に耳をふさいでしまう生産・流通のあり方には正直限界を感じます。センターも地産地消を基本としていますが、やはり消費者のニーズと声に耳を傾けることも重要だと考えます。同時に商品としての“有機”だけでなく、本来環境や地産地消の大切さを説く価値観、理念としての“有機”を広めていくことの大切さを感じる良い機会となりました。

 

MD部 農産チーム 杉本


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