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有機生産者をとりまく状況から有機野菜の活用方法まで、
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日本の安全な畜産業を考える「ミートミーティング」(後編)

ゲストスピーカー・松平尚也さんのお話し

 松平さんは昨年のミートミーティングでゲストスピーカーを務めた神田浩史さんと同じNPO法人・AMネットの代表理事であり、京都・洛北の京北町で農薬・化学肥料不使用栽培で野菜を作る生産者でもあります。農業を通じて農産や食料の国内外の問題を調査、研究をしている松平さんですが、今回は昨年に大筋合意に至ったTPPが日本の畜産に与える影響についてスポットを当て、解説して頂きました。

 TPP参加国の中で農地面積を比べた場合、日本の農家1戸あたりの平均面積は約1.9ha、それに比べアメリカは約200ha、オーストラリアに至っては約3000haとその差は歴然。こんな状況で諸外国と競争をした場合、生産量や生産コストでは競争になりません。現在、農家を守るための働きとして大きな力を持つ「関税」がTPPの影響で撤廃されると農家に大きな影響が表れます。例えば輸入豚肉は現在、関税のおかげでキロ当たり482円という価格が付いていますが、撤廃が決定すると、5年後にはキロ当たり約100円、そして10年後には70円になるという試算が出ています。ソーセージや加工品は6年後には完全撤廃。牛肉も現在の38.5%から撤廃後16年目に9%(100gあたり40?70円程安くなる)となるようです。このような状況になったとき、果たして約6万戸強の日本の畜産農家を成り立たせることができるのでしょうか?費用対効果で見たとき、日本の肥育豚の農家は国の補助金を使ってやっと1000頭以上肥育して初めて黒字になるといわれています。しかしTPP発効後は2000頭以上肥育しないと利益が出ないという試算になり、これまで以上の大規模経営の農家でないと生き残れないと言われています。

 


大筋合意後に政府が算出した農業への影響試算の数値がでたらめ

  また大きな問題として、大筋合意後に政府が算出した農業への影響試算の数値がでたらめだということです。これを見てみると、TPP交渉参加前の試算に比べ、生産減少額が約10分の1に減らされており、東大の研究機関が算出額が明らかに現実離れしていると指摘しています。

TPP受け入れのため、関税を撤廃するかわり、国は対策費として補助金制度を盛り込んでいますが、この補助金も実は新たなものではなく、これまであったものを少し改良したものです。さらに大浦さんの話では補助金をもらうためには特定の飼料メーカーと契約し、一定量の配合飼料を購入することが必要条件となっており、飼料メーカーの配合飼料を購入農家にだけ補助が受けられるそうです。しかし配合飼料に含まれている抗生剤や遺伝子組み換え穀物を避け、自分達で穀物や素飼料を選び、自家配合をしている大浦さんや大鹿村の生産者の方にはその恩恵はまったく受けられないそうで、消費者の安心安全を考える生産者はますます苦しい対場になるそうです。

 


将来起こりうる海外産のオーガニック米の普及

  また海外の生産者は今回のTPPで日本という大きなマーケットを狙っています。

牛肉に関してはアメリカがBSEの発生以降、オーストラリアに牛肉の輸入シェアトップの座を奪われていましたが、今回のTPPを契機にトップの座を狙っており、対するオーストラリアも、これまでの赤身重視の肉質から、穀物を与えて日本人好みの「さし」のあるお肉の生産を増やすなどの戦略を掲げています。また牛や豚・鶏だけでなく、生乳の分野も同じ状況で、日本の畜産業界の将来が見えない状態になりそうです。

また畜産だけでなく、私達の主食であるお米に関しても同じことが伺えます。日本政府の試算ではお米の生産減少額が「0」とし、影響がないと言っています。(根拠はわかりませんが・・・)しかし、アメリカでは既に日本人が好む食感のお米を大量に有機栽培で育てることを研究(海外では「ビッグオーガニック」と呼ばれる、有機栽培で単一品目を大量生産する方式を取っているそうです)しており、これが実用化されれば、将来的には日本のお米より安いオーガニックのお米が海外から大量に輸入される可能性も出てきています。このほかにも「みかん」や「りんご」などの果物に関しても大きく影響が出ると言われています。

 このようにTPPの発動で日本の農業を支える小規模農家は壊滅的なダメージを受けると言われており、特に小規模農家が多い近畿地区は農業の産業自体が壊滅してしまう恐れもあると警鐘を鳴らしています。また畜産物の輸入が増えると穀物飼料の遺伝子組み換え作物への懸念も問題となるでしょう。現時点のデータ(2012年分)で日本への遺伝子組み換え作物の輸入量推定を見てみても、トウモロコシで約78%、大豆91%、油の原料となる菜種は95%と高く、また2014年のデータでは遺伝子組み換え作物を栽培した国は28ヶ国、栽培面積は1億8150万ヘクタールで、1年前のデータと比べて630万ヘクタール増加しています。

 


安心な食べ物への意識を広めることの重要性

 こんな状況の中、私達にできることは昨年、神田さんも仰っていたように、これまで以上に持続可能な農業へ取り組むことと謳っています。現在日本の有機農産物は全体の約0.5%と言われ、アジアの中でも遅れを取っています。しかし安心安全な食への取り組みが少しずつ広まってきている今、今後はより重要視され、私達センターのような日本の農業を守ろうと願う個人、法人、団体が横のつながりを強めながら輪を広げていくことが大事だと仰っていました。

 今回のミートミーティングでは、これまで以上に各団体の意見を出し合うディスカッションの場となりました。安心安全な食べ物の供給を継続するには?オーガニックという意識を普及させるには?など、各団体という壁を越えて、それぞれが理想とする思いを現実にするにはどうすればよいかという話し合いの場となりました。そして各団体の意見は微妙に違えども、大まかなベクトルの方向は一致しているように感じました。まぁのが扱うお肉が各団体をつなぎ、みんなで安心を考える生産者を買い支える。TPPに対抗するための持続可能な農業を支える取り組みは、私達の普段からの安心安全な食べ物への意識とそれらをどう伝えるかだと感じました。これをお読みになっている皆さんは安心な食べものへの意識はお持ちでしょうから、今度はそれをいろんな方へお伝えください。そうすることで安心な食べ物への意識が広がっていくことでしょう。またこのような場を設けてくださったまぁのの小村さんに感謝しつつ、できれば来年度は会員の皆様もご参加頂き、ご自身でいろんな意見を聞いてみてはいかがでしょうか。そうすればより安心な食べ物への意識を広めることの重要性を肌で感じるはずです。

 

プロモーション部:葛上



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